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企業のビットコイン財務戦略とは?MicroStrategy(Strategy)など保有企業の実例としくみ

結論:ビットコインを「企業の財務資産」として保有する上場企業が世界に広がっている
2020年にStrategy(当時MicroStrategy)が現金・社債の一部をビットコインに置き換え始めて以来、「ビットコイン財務戦略(Bitcoin Treasury Strategy)」を掲げる上場企業が世界的に増えています。2026年7月時点で世界最大の企業保有者はStrategyの843,775BTC、次いでTwenty One Capital(XXI)とメタプラネットが4万3千BTC台で僅差の2位・3位を争っています。ただし「保有量が増え続ける」わけではなく、資金繰りのために一部を売却する企業も実在します。本記事は特定企業や銘柄の売買を推奨するものではなく、しくみと実例を中立に整理する教育目的の解説です。そもそもビットコインとは何かを知らない方は先にそちらもご覧ください。
この記事のポイント
- 「ビットコイン財務戦略」とは、企業が現金・国債の一部をビットコインに置き換えて保有する経営判断。先駆者はStrategy(旧MicroStrategy)。
- 2026年7月時点でStrategyが843,775BTCで世界最大。Twenty One Capital(43,500BTC超)、メタプラネット(43,000BTC)が僅差で続く。
- 保有量は一様に増え続けるわけではない。MARA Holdingsは2026年3月に負債圧縮のため約1.5万BTCを売却するなど、方針は企業ごとに異なる。
- 2025年からの会計基準変更(時価評価)により、保有ビットコインの含み損益が四半期ごとの決算にそのまま反映されるようになった。
- 「mNAV」という指標が株価と資金調達の仕組みを左右し、プレミアムが縮小すると資金調達の前提が崩れるリスクがある。企業の財務戦略と個人の資産形成は前提が異なり、これは投資助言ではない。
「ビットコイン財務戦略」とは何か
ビットコイン財務戦略とは、企業が本業のキャッシュフローや資金調達で得た資金の一部(あるいは大部分)を、現金や短期国債の代わりにビットコインで保有する経営方針を指します。狙いとして企業側がよく挙げるのは、法定通貨の実質価値が目減りするリスクへのヘッジ、希少性のある資産を長期的な準備資産として持つ発想、そして株式市場から調達した資金でビットコインを積み増し「1株あたりのビットコイン保有量」を伸ばすという資金調達モデルの3つです。最後のモデルはStrategyが確立したもので、詳しくは後述の「mNAV」で説明します。
会計基準の変化が追い風に:時価評価(ASU 2023-08)
企業が保有するビットコインの会計処理は、2025年から大きく変わりました。米国会計基準審議会(FASB)が定めた新基準「ASU 2023-08」は、2024年12月15日以降に始まる事業年度(暦年決算の企業では2025年度)から適用され、ビットコインなど対象の暗号資産を四半期ごとに時価評価し、含み損益を純利益に反映させることを義務付けています。
それ以前の旧ルールでは、ビットコインは「無期限耐用年数の無形資産」として扱われ、時価が取得原価を下回った場合のみ減損(損失計上)し、逆に値上がりしても売却するまで利益を計上できない「損失だけ計上される」非対称なルールでした。新ルールでは値上がり・値下がりの両方がその期の決算に直接反映されるため、株価の四半期ごとの変動要因としてビットコイン価格がより明確に表れるようになっています。実際、Teslaは2026年第1四半期にビットコイン価格の下落を受けて約1億7,300万ドルの評価損を計上したと報じられています。
主なビットコイン保有企業(2026年7月時点の実例)
Strategy(旧MicroStrategy)— 世界最大の企業保有者
Strategy(Nasdaq: MSTR)は2026年7月5日時点で843,775BTCを保有し、企業としては世界最大のビットコイン保有者です。同社は2025年2月5日に社名を「MicroStrategy」から「Strategy」へ変更すると発表し(法的な社名変更は同年8月11日付で完了)、「世界初のビットコイン財務戦略企業」を自認しています。
注目すべきは、Strategyも一方的に買い増すだけではない点です。2026年7月6日までの週には、優先株(STRK・STRF・STRC・STRDなど)への配当支払いとドル準備金の補充を目的に、保有BTCの一部3,588枚(約2億1,600万ドル相当、1BTCあたり約6万ドルで売却)を売却したと報じられました。これは同社が2020年にビットコイン取得を始めて以来、公表ベースで最大規模の売却でした。同社が保有BTCを売却した例は、2022年の税務上の損失計上目的の売却、2026年6月の小規模な売却に続き、これが3回目です。「世界最大の保有者」であっても、資金繰りの都合でビットコインを取り崩すことがある、という実例です。
Twenty One Capital(XXI)— Tether・Bitfinex主導の「ビットコインネイティブ企業」
Twenty One Capital(NYSE: XXI)は、ステーブルコイン発行会社Tetherと関連取引所Bitfinexが主導して2025年12月にニューヨーク証券取引所へ上場した企業で、上場時点で43,500BTC超を保有していました。ソフトバンクグループも少数株主として参加していましたが、2026年5月にはTetherがソフトバンクの保有株式を買い取り、取締役会からソフトバンク枠を外すと発表されています。ビットコインの保有に加えて決済・マイニング事業との統合も構想されており、Strategyとは異なる「ビットコインを中核事業に据えた新設企業」型のモデルです。
メタプラネット — 日本を代表するビットコイン保有企業
東京証券取引所スタンダード市場に上場するメタプラネット(証券コード3350)は、日本企業として最大規模のビットコイン保有企業です。2026年3月31日時点で40,177BTC(取得総額約39億ドル)を保有し、この時点で世界の企業保有者として3位となりました。その後も買い増しを続け、2026年6月30日時点の保有量は43,000BTCに到達したと報じられています。Twenty One Capitalとはわずかな差で世界2位・3位の座を争う水準です。日本企業がこの規模でビットコインを財務資産に据える例は珍しく、海外のビットコイン財務戦略企業の動向を見る上でも日本の読者にとって身近な参照点になっています。
MARA Holdings — 「保有し続ける」だけではないマイニング企業の例
ビットコインのマイニング企業であるMARA Holdings(旧Marathon Digital)も大規模なBTC保有企業の一つですが、2026年の動きは「一様に保有量が増え続けるわけではない」ことを示す実例になりました。同社は2026年2月末時点で53,822BTCを保有していましたが、3月4日から25日にかけて約1万5,133BTCを約11億ドルで売却。この資金で転換社債(コンバーティブルノート)の買い戻しを行い、残存する転換社債残高を約33億ドルから約23億ドルへ、約30%圧縮しました。売却後の保有量は約38,689BTCです。同社CEOのフレッド・ティール氏は、この売却を「財務基盤を強化し、長期的な成長のための布石」と説明しています。ビットコインをマイニングする企業自身が、財務戦略上の判断で保有量を減らすこともある、という点は覚えておく価値があります。
Tesla — 大企業の中の「一部保有」の例
電気自動車メーカーのTesla(Nasdaq: TSLA)は2021年にビットコインを取得して以来、2026年第1四半期時点で11,509BTCを保有し、この数量に変化はありません。Strategyのようにビットコインを財務戦略の中核に据える企業とは異なり、Teslaにとってビットコインは会社全体の資産規模に比べれば小さな一部分の配分です。それでも前述の新会計基準により、価格変動がそのまま決算の評価損益として表れるようになった実例として参考になります。
リスク:mNAV・レバレッジ・強制売却の可能性
Strategy型のビットコイン財務戦略企業の株価を理解するうえで重要な指標が「mNAV(market-cap to Net Asset Value)」です。これは企業の時価総額(または企業価値)を、保有するビットコインの市場価値で割った比率です。
Strategyがこれまで実践してきた資金調達モデルは、株価がmNAV1.0倍を上回っている(プレミアムがついている)ときにだけうまく機能します。1.0倍超の株価で新株を発行し、その資金でビットコインを買い増せば、既存株主から見た「1株あたりのビットコイン保有量」は増加します。プレミアムが新株発行の正当化材料となり、さらなる調達を呼ぶ好循環(フライホイール)です。
しかし、株価がmNAV1.0倍を下回る(ディスカウントになる)と、この仕組みは逆回転します。1.0倍未満で新株を発行すると、既存株主の1株あたりビットコイン保有量はむしろ希薄化してしまうためです。2026年6月時点の報道では、MSTR株が「希薄化させずに買い増しを続けられる最低水準」を1割台後半(17〜18%程度)下回る水準で取引されていたと伝えられており、プレミアムに依存した調達モデルが逆風にさらされていることを示しています。加えて、これらの企業は転換社債や優先株といった負債性の高い資金調達も併用しているため、市場が悪化した局面では、含み損を抱えたままビットコインの一部を売却せざるを得なくなる「強制売却」のリスクも指摘されています。株価は必ずしもビットコイン価格と同じ値動きをするわけではなく、企業の負債構造や資金調達環境によって増幅・逆行し得る点には注意が必要です。
個人投資家が知っておくべきこと
ビットコイン財務戦略企業の株式を買うことと、ビットコインそのものを買うことは同じではありません。企業株には、上記のようなレバレッジ・希薄化・事業リスクが上乗せされます。ビットコインへの直接的なエクスポージャーを検討する場合はビットコインの買い方を、間接的にETF経由での資金フローの動向を見る場合はビットコイン現物ETFの資金流入・流出を参照してください。日本国内で個人がビットコインを売却して利益を得た場合の税金の扱いは、企業の会計処理とは全く別の制度(雑所得としての総合課税)です。詳しくはビットコインの税金はいくらから発生する?をご覧ください。最新の価格動向はビットコインは今どうなってる?で随時更新しています。
企業が経営判断としてビットコインを財務資産に組み入れることと、個人が資産形成の一部としてビットコインを持つことは、前提となる資金力・時間軸・リスク許容度が大きく異なります。本記事はしくみと実例の紹介であり、特定の株式や暗号資産の購入・売却を推奨するものではありません。
よくある質問
Q. ビットコイン財務戦略企業の株価は、ビットコイン価格と連動しますか? A. 単純な連動ではありません。企業の負債構造や「mNAV」(時価総額と保有ビットコイン価値の比率)によって、ビットコイン価格以上に上下することがあります。プレミアムが縮小・消失すると、株価がビットコイン価格を下回るペースで下落することもあります。
Q. MicroStrategy(Strategy)株を買うのは、ビットコインを買うのと同じですか? A. いいえ。Strategy株は企業の負債・株式発行・事業リスクを内包した株式であり、ビットコイン現物とは値動きの仕組みが異なります。
Q. 日本企業でビットコインを保有しているのはメタプラネットだけですか? A. 2026年7月時点で最大手はメタプラネットですが、これは個別企業の取り組みであり、本記事は特定企業への投資を推奨するものではありません。
Q. 企業のビットコイン保有量は今後も増え続けますか? A. 一様には増え続けません。MARA Holdingsのように、負債圧縮などの財務判断から保有量の一部を売却する企業も実在します。Strategyも2026年7月に一部売却を行っています。
参考・出典
- CoinDesk「Michael Saylor's Strategy dramatically ups pace of bitcoin sales, raising $216 million」(2026年7月6日): https://www.coindesk.com/markets/2026/07/06/michael-saylor-s-strategy-dramatically-ups-pace-of-bitcoin-sales-raising-usd216-million
- Strategy公式プレスリリース「MicroStrategy is Now Strategy」(2025年2月5日): https://www.strategy.com/press/microstrategy-is-now-strategy_02-05-2025
- CoinDesk「Metaplanet (3350) acquires 5,075 BTC, jumps to third largest Bitcoin treasury company」(2026年4月2日): https://www.coindesk.com/markets/2026/04/02/metaplanet-acquires-5-075-btc-jumps-to-third-largest-bitcoin-treasury-company
- TFTC「Metaplanet Adds 2,823 BTC, Hits 43,000 and Becomes #3 Corporate Treasury」(2026年7月2日): https://www.tftc.io/metaplanet-43000-btc-q2-2026-third-largest-corporate-treasury
- BusinessWire「Twenty One Capital Outlines Operating Plans to Build the Bitcoin Company」(2026年5月20日): https://www.businesswire.com/news/home/20260520500872/en/Twenty-One-Capital-Outlines-Operating-Plans-to-Build-the-Bitcoin-Company
- Bitcoin Magazine「MARA Dumps $1.1 Billion In Bitcoin To Cut Debt By 30%」: https://bitcoinmagazine.com/news/mara-dumps-1-1-billion-in-bitcoin
- CoinDesk「Tesla made no changes to bitcoin holdings in Q1 as it booked $173 million digital asset loss」(2026年4月22日): https://www.coindesk.com/markets/2026/04/22/elon-musk-s-tesla-reports-unchanged-bitcoin-holdings-books-usd173-million-digital-asset-loss
- KPMG「FASB issues final ASU on crypto asset accounting」(ASU 2023-08解説): https://kpmg.com/us/en/frv/reference-library/2023/fasb-to-issue-final-crypto-asset-accounting-asu.html
- CoinDesk「Bitcoin Treasury Stocks: How to Read 'mNAV' — and Why NYDIG Says It Falls Short」(2025年11月30日): https://www.coindesk.com/business/2025/11/30/what-mnav-really-tells-you-about-bitcoin-treasury-companies-and-where-it-falls-short
投資にあたっての注意
本記事は情報提供を目的としたものであり、投資助言ではありません。ビットコインは価格変動やハッキング、紛失等のリスクがあります。投資判断はご自身の責任で、余裕資金の範囲で行ってください。本記事は公開時点の公開情報に基づきます。最新の数値・制度は一次情報をご確認ください。
Sources
- Michael Saylor's Strategy dramatically ups pace of bitcoin sales, raising $216 million — CoinDesk
- MicroStrategy is Now Strategy — official press release (Strategy.com)
- Metaplanet (3350) acquires 5,075 BTC, jumps to third largest Bitcoin treasury company — CoinDesk
- Metaplanet Adds 2,823 BTC, Hits 43,000 and Becomes #3 Corporate Treasury — TFTC
- Twenty One Capital Outlines Operating Plans to Build the Bitcoin Company — BusinessWire
- MARA Dumps $1.1 Billion In Bitcoin To Cut Debt By 30% — Bitcoin Magazine
- Tesla made no changes to bitcoin holdings in Q1 as it booked $173 million digital asset loss — CoinDesk
- FASB issues final ASU on crypto asset accounting (ASU 2023-08) — KPMG
- Bitcoin Treasury Stocks: How to Read 'mNAV' — and Why NYDIG Says It Falls Short — CoinDesk
FAQ
- ビットコイン財務戦略企業の株価は、ビットコイン価格と連動しますか?
- 単純な連動ではありません。企業の負債構造や「mNAV」(時価総額と保有ビットコイン価値の比率)によって、ビットコイン価格以上に上下することがあります。プレミアムが縮小・消失すると、株価がビットコイン価格を下回るペースで下落することもあります。
- MicroStrategy(Strategy)株を買うのは、ビットコインを買うのと同じですか?
- いいえ。Strategy株は企業の負債・株式発行・事業リスクを内包した株式であり、ビットコイン現物とは値動きの仕組みが異なります。
- 日本企業でビットコインを保有しているのはメタプラネットだけですか?
- 2026年7月時点で最大手はメタプラネットですが、これは個別企業の取り組みであり、本記事は特定企業への投資を推奨するものではありません。
- 企業のビットコイン保有量は今後も増え続けますか?
- 一様には増え続けません。MARA Holdingsのように、負債圧縮などの財務判断から保有量の一部を売却する企業も実在します。Strategyも2026年7月に一部売却を行っています。
本記事は情報提供のみを目的とし、投資・金融・取引の助言ではありません。価格は参考値で古い場合があります。投資判断はご自身の責任で。